■■■ ■ ■ 9・11とモーツアルト ■                           緑川ひかる 「WTCテロから1年の9月11日に、モーツアルトのレクイエムを 世界中で歌いませんか?」 というおさそいがあった。 「米国がアフガンを空爆した日に連続演奏会をやるのならやるよ。」 と言って、いやーな顔をされた。何でだろう? WTCで死んだ人より アフガン空爆で死んだ民間人のほうがずうっと多いのに・・・ 米国の横暴についてはすでにネットに氾濫しているのでここでは述べない。 一言だけいえば、論評より行動が大事だということ。 論評ではないけど、今日、話したいのはモーツアルトのレクイエム、 モーツアッルトが死の直前まで取り組み、未完成に終わりながらも、 何人もの作家が補筆したものが世界中で愛され続けている。奇跡的作品。 モーツアルトらしくない重厚な歌いだしから、第一曲で比類なきフーガを 惜しみなく使う。このフーガの前に、神の前で裸にされてしまわない人 とはお友達になりたくない。 大きく第一部と第二部に分かれるが、第一部はほとんどできて、第二部は 3分の1くらいで彼は死んだ。ほとんどできた第一部も、残念ながら 最後のフーガが断片しか残っていない。第二部第一曲の後半のフーガは とても力強いもので元気が出る。そして、終曲も絶対フーガが置かれた はずだが、それは影も形もない。 「ああ、この終曲フーガを聴きたい!!!!」 と熱望したのは、ひかるだけではないはずだ。しかし、ひかるは考え直した。 普通、天才というものは、若いときにすばらしい作品を書く、 メンデルスゾーンなどは、17歳のときの「真夏の夜の夢」を越える作品 はない。しかし、モーツアルトは、0代、10代、20代、30代と 音楽も天才のままずうっと成長している。もし、このレクイエムが完成 してしまったら、それから百年くらい、音楽家はやることがなくなり、 音楽は「歴史の終わり」を迎えたかもしれない、そうならないため、 彼は、早く、逝ったのだ。 追伸 :  この曲のひかるのお奨め録音は、アーノンクールです。