■■■ ■ ■ ひかる誕生記または不思議な体験 ■                            緑川ひかる 今月はちょっと不思議な体験を書きます。ひかるが生まれたきっかけでも あります。ひかるはペンネームです。何故、ペンネームが必要になったか? 一時期、トランスパーソナル心理学にかなり凝ったことがありました。 前回紹介したように「個人」「エゴ」を超えようとするる心理学です。 ユング心理学の流れを組む学派では、生物の「共通意識」「共同知」みたいな ものがあり、無意識の奥深くでは全部その「共通意識」にみんなつながって いるんだという考えがあります。そして、肉体は死んでも「共通意識」の 一部であることには変らず、存在は続いていく、存在の形態が変るだけだと いうものです。トランスパーソナルでもこの考えを踏襲する人は多いのです。 こういう考えは以前から知っていましたが、それを体感するようになった のはスエットロッジを経験してからです。トランスパーソナルの分野では 伝統儀式を現代でうまく使うことを重視しています。インディアンの スエットロッジは、まず10人程度がはいれる半球のドームを作ります。 土などで作るのです。光は通しません。そのドームの中に真っ赤になるまで 火にくべた石を沢山いれて、密室にして極限まで温度を上げて浄化の儀式 をします。最後にそのドームから「生まれ変わる」のです。そう、ドームは 大地の子宮なのです。 このスエットロッジを経験したその晩、夢を見ました。この世のものでない 荘厳な音楽が鳴っていました。これまで聞いたどの音楽とも違う強烈なもの です。もし夢を記憶する装置があったら、いまごろ希有な作曲家として 世にでているに違いありません(笑)。どんなに考えてもあのような音楽の 記憶はなかったのです。また、単にメロディーが美しいだけであれば 無意識に眠っていた才能が起きただけとも言えますが、夢で聞いた音楽は 訓練を積んだ人間でないと作ることができない「構成力」が必要なもの であり、あふれる才能に加え作曲経験がないとできないものだったのです。 曲の終盤にバリトンがスクッと立って朗々と歌います。 「黄色い息をはきだして、緑の大気を吸い込みなさい。」 強烈な音楽で浄化された聴衆が、その呼吸によって生まれ変わる体験を するのです。幸せな体験でした。 目が覚めて、興奮が収まってよく考えると、「ああ、自分は共通意識から 贈り物をもらったんだなー」と思ったのです。そう考える以外、説明の つかない夢でした。 いい体験だったのですが、それ以来、「共通意識」へのつながりを意識 している自分と、企業で働き、現実に「生活」している自分が同居すること がとても気持ち悪い状態になってきてしまいました。「これは別人格に なるしかない」と考え、別の名前でネットでエッセイなど書き始めました。 これが「ひかる」の誕生なのでありました。